読書メモ:『考える脳 考えるコンピュータ』
Numenta の HTM理論に興味をもったので読んでみた。結果的には非常に楽しく読めた。
- 作者: ジェフ・ホーキンス,サンドラ・ブレイクスリー,伊藤文英
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2005/03/24
- メディア: 単行本
- 購入: 15人 クリック: 141回
- この商品を含むブログ (107件) を見る
- 著者ジェフ・ホーキンスさんは超一流のエンジニア&起業家。一旦いくつかのビジネスを成功させてから、脳を模範にした汎用人工知能を開発するため大学に入り直して神経科学を学んでいる。この気合の入り方が凄い。
- 2005年の出版だと考えると、その後今日に至るAI発展の萌芽になる話がいろいろ含まれているのが興味深い。Deep Learning(という言葉はもちろん使われていないが)の原型である脳の視覚野の話なども概説されている。
- 彼のアイデアの根幹は、大脳新皮質の柱状構造をモデルにした人工知能。実はこの本全体がこの人工知能モデルの基本設計書みたいな雰囲気がある。執筆当時の最先端の神経科学の知見を援用しつつも、エンジニアらしい割り切りで『仕様』を決めている。現在 Numentaが取り組んでいるHTMもこの延長線上にある。
- 近年急速に研究が進んだとはいえ、脳の内部構造は超絶に複雑で、まだまだ謎だらけである。しかし彼は『一見複雑に見えても、なんらかのシンプルな基本原理によって駆動されているはず』という信念にもとづき、いくつか仮説を導入しつつも設計をまとめている。
- よく知られているように、大脳新皮質はいくつかの機能別の領野にわかれているが、実際に観察すると神経細胞の構造はどこも同じに見える。したがって脳の情報処理は、機能別に別のアルゴリズムを使うのではなく、統一された一つのアルゴリズムで動いているというのが彼の主張。
- いくつかの神経科学の知見をもちいて、大脳新皮質は記憶にもとづく予測器の役割を果たしているとしている。この部分はいま自分が一番問題意識を持っているテーマに繋がるので興味深く読んだ。
- 脳神経の活動のスパース性についても言及がある。
- 『意識』がなぜ生じるのかにつても、大胆な?仮説を展開している。私はかなり説得力のある面白い説明だと思った。
今後は、NumentaのHTM(NuPIC)の具体的な中身を調べてみよう。