読書メモ:アクセル/デジタル時代の営業・最強の教科書
- 本書は、新しい営業(セールス)のあり方を説いた本である。私は技術畑の出身であり、やはりどうしても科学技術系の本を読みたくなることが多く、普段はこの分野の本はあまり読まないが、MIT卒の計算機エンジニアが実践した科学的な営業手法を紹介している本ということで手にとってみた。
- 作者: マーク・ロベルジュ,神田昌典,(監訳)神田昌典,(監訳)リブ・コンサルティング,門田美鈴
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2017/06/02
- メディア: 単行本
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- 著者は、マーク・ロベルジュ氏。創業間もないハブスポット社でイチから営業組織を構築し、大成功させた人である。営業経験ゼロから、エンジニアリング発想でそれを達成したというのが面白い。これは、今で言うマーケティング・オートメーションの概念につながっている。
目次(抜粋):
第1部 営業採用方式(いつもおなじように成功している営業スタッフを採用する)
第2部 営業育成方式(すべての営業スタッフに同じ方法で研修する)
第3部 営業マネジメント方式(営業スタッフに同じ営業プロセスを踏ませる)
第4部 見込み案件創出方式(営業スタッフに毎月同じ質と量のリードを与える)
第5部 テクノロジーと実験
主な感想
- 読んでみた結果は大当たり!であった。事前の予想では、最新のデジタルツールを駆使したオンライン営業のテクニック集のようなものかと思ったが、全くそれは違っていた。
- 『デジタル化』と聞くと、デジタル=数値管理=冷酷で非人間的な管理強化・・・みたいなイメージを抱く人もいるかもしれないが、本書が主張していることは全く違う。ごく自然で当たり前の営業マン=人間の心理や行動をデジタルでうまくサポートすることで、加速=アクセラレーションしようという主旨である。
- 実際、紙面の多くが著者が実際に自身の会社で実践した営業マンの採用や指導方法、顧客対応(電話の仕方の事例が多いのには驚いた)、評価体系の事例など、アナログで泥臭い話題に費やされている。
- また、スタートアップなどで最初にどのような人材を採用すべきか、失敗しやすいポイントなども解説されていて、非常に参考になった。
- では、どこがデジタル化の本質なのか?著者の主張の柱は『測定可能で予測可能な営業活動(売上)』である。まさにこれは科学的な思考方法だ。
- 営業マンの行動や顧客のステータスなどをすべてをモデル化して定量的に評価して改善しようとする姿勢がすばらしい。従来なら『勘』や『経験』と呼ばれていた領域もモデル化してく様子には感銘をうけた。
- モデルと指標があれば、トップ営業マンの行動特性を新人営業マンにも指導しやすい。安易な営業同行OJTなどより何倍も育成効果が高いだろう。
- 後半は、見込み案件の創出、すなわちマーケティングの具体的手法が述べられている。特にハブスポット社が得意とするインバウンドマーケティングの手法が詳しく述べられていて、ここはすぐにでも仕事に使えそうである。
まとめ
- この本は一応営業が主題だが、挙げられている思考法やノウハウは、エンジニアなど他の職種のマネージメントや育成・人事採用にも役立つと思う。デジタル時代の経営書としても読めるので、ビジネスに関わるあらゆる人におすすめできると思う。
- 営業とマーケティングの連携はますます密接であることが求められる。インバウンドマーケティングはこれからのビジネスマンの必須の知識になるであろう。